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スポーツ傷害に対する治療は、ただ単に「痛みを取り除く」「疲労の除去」だけではなく、障害の状況に応じたリハビリの指導も必要です。少し経験のある鍼灸師、マッサージ師であれば「痛みを取り除く」「筋の緊張の改善」「疲労の除去」などはそんなに難しいものではありません。我々、治療者でももちろん可能です。しかし、それでは「怪我をする」→「治療」→「競技復帰」→「怪我をする」→「治療」→・・・の繰り返しになってしまいます。そこで必要になってくるのがアスレチィック・リハビリテーションの知識です。我々は日本体育協会のアスレティックトレーナーや各競技でトレーナー活動をしていたもんが多くいます。それらの経験やまた現在も臨床スポーツ医学会等のへの参加などによって得られた知識を生かし、各競技に合わせた早期復帰と予防に関する指導も行っています。(これが本当のスポーツ鍼灸の姿であると考えています)



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ポーツ復帰まで経過を追えた症例の検討では、平均の復帰期間は筋腱移行部に損傷がないⅠ型で2週、筋腱移行部に損傷がみられるⅡ型で6週、明らかな完全断裂あるいは付着部での裂離損傷がみられるⅢ型で20週という報告もあります。

手術適応となるⅢ型を除いた症例に関して当院の診療対象になります。
 
ハムストリングス中等度(Ⅱ型)の肉離れの場合
1.受傷後1週目
 受傷後24〜48時間は筋損傷による炎症症状の抑制が必要となり、RlCE処置を行う。歩行が困難な場合は介助や松葉杖などで免荷する。それ以降,以下のメニューを開始する。
1) 温熱療法・電気療法
2)患部外トレーニング
4)アイシング(トレーニング後に実施する)
鍼治療は受傷部位周辺への置鍼のみとし、強刺激は避ける。
 
2.受傷後2〜3週目
 受傷後2〜3週では、炎症症状・収縮時痛が消失した場合、患部の血行の改善、除痛や柔軟性の獲得を目的とした温熱療法、物理療法、運動療法を上記のメニューに追加して以下の項目を行う。
1)ホットパック等(15分):炎症症状の消失を確認する。
2) ストレッチング:疼痛の残存しない範囲内でスタティックストレッチングから行う。
3) 患部エクササイズ
・OKCにおけるアイソメトリックトレーニング(等尺性収縮訓練)
→レッグカール:膝関節は屈曲60°位で固定、6~10秒キープ。
・CKCにおけるアイソメトリックトレーニング(等尺性収縮訓練)
→バックブリッジ:踵と殿部の距離は狭い位置から、6~10秒キープ。
4) 患部外トレーニング
5)エアロバイク(15分から) 
鍼治療は受傷した筋への低周波鍼通電療法を行う。通電の強さは痛みが出ない程度とする。 
3.受傷後3〜4週目
1) ホットパック等(15分)
2) ストレッチング:スタティック+クライオ・徒手抵抗(アイソメトリック法)ストレッチ
3) 患部エクササイズ
・OKCにおけるアイソトニックトレーニング(求心性収縮訓練)
→レッグカール:チューブ・砂嚢等の低負荷から。
・CKCにおけるアイソトニックトレーニング(求心性収縮訓練)
→スクワット:自重で痛みの出ない角度まで。
4) 患部外トレーニング
5)持久力トレーニング 
 →ランニングが出来る目安としては日常生活動作及び普通歩行が可能で、ある程度の負荷運動量が出来るようになり、また膝屈曲歩行などのエクササイズが正確に長時間出来るようになってから開始する。ランニングはハーフスピードくらいのランニング・シユーズでのジョギングから開始、60%、80%、100%と徐々にスピードを上げ
ていく。
ジョギング開始に当たっては、圧痛、ストレッチング・筋収縮時の疼痛が伴わないこと。
 
3.受傷後5週目~競技復帰
1) ホットパック等(15分)
2) ストレッチング:スタティック+クライオ・徒手抵抗(アイソメトリック法)ストレッチ
3) 患部エクササイズ
・ CKCにおけるアイソトニックトレーニング(求心性収縮訓練)
→負荷・回数を増加
・アイソトニックトレーニング(遠心性収縮訓練)
 →ロシアンハムストリング
4) 患部外トレーニング
5)持久力トレーニング 
 
鍼治療は低周波鍼通電療法を中心に行うが、痛みが引かないときには患部へ直接刺激する。
エクササイズ後にはアイシングとストレッチを行わせ、エクササイズ後の筋疲労を蓄積させないようにする。また、筋痛や疲労の除去、コンディショニングを目的にマッサージや鍼治療も有効である。さらに,足元が不安定な状態を想定したスライドボードやバランスボードを使った身体のバランスを維持するエクササイズなどを取り入れる。エクササイズのレベルを上げる際にはさまざまな疼痛の有無、疲労の状態、柔軟性に注意をはらい、回復途上での再発防止に心がけることが重要である。 
再発予防の注意点としては筋の柔軟性の確保や伸筋・屈筋のバランスをととのえる事が必要なので、マッサージなどで筋をほぐし、また筋力を測定して屈筋・伸筋のバランスをとるメニューを必ず加える。(日本体育協会アスレチィックトレーナー教本を参照しました)
近年、マイクロカレント(微弱電流)の使用により回復が早くなる傾向が認められています。当院でも使用し、その効果を確認しています。
 

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私が以前、学会発表した抄録に少し手を加えたものを添付しました。またもう少し詳しくお知りになりたい方は1行下を参考にHPを検索してみてください。
タイトル
「股関節屈曲筋力低下に対する鍼治療の効果ー大腰筋を中心として」
私(廻谷)の早稲田大学大学院修士課程の論文になります。
55ページもあるので全ページを読む必要はないと思いますが、
大腰筋への鍼治療による効果と刺入方法などが書いてあります。

では、抄録です。

腸腰筋由来による腰痛に対する鍼治療の効果
【目的】
 スポーツ選手の腰痛の原因として、腸腰筋が関与していると考えられる症例が多くみられる。スポーツ選手への腰痛の治療法としてよく鍼治療が用いられるが、本研究では特に腸腰筋に対しての鍼治療の効果を明らかにするために、腸腰筋(とくに大腰筋)に対し低周波鍼通電療法を行い、自覚症状の変化と腸腰筋の筋出力をハンドヘルドダイナモメーター(HHD)で計測し、左右差、治療前後の差を比較、検討した。
【対象】
 対象は腸腰筋由来と思われる腰痛を主訴とした18~22歳までの男子スポーツ選手5名。
【評価】
 腰痛の評価は日整会腰痛治療成績判定基準を用いた。その他の項目として、治療前後に 1)長座前屈での指趾間距離 2)後屈時痛(ベインスコア)の有無と疼痛部位 3)腸腰筋のストレッチ痛(ベインスコア)を測定・記入した。腸腰筋の筋出力HHD(Power Track2)を用いた。測定は同一検者が行い、また、治療は別人が行う事とした。
【治療方法】
 長さ90mm、太さ0.24mmの鍼を用い、腰部より大腰筋に刺入し、周波数はlHzで15分問通電した。刺入方法は患者は腹臥位とし、L4の高さで、脊柱起立筋の外側で、かつ、腸骨稜の上部より内側になるような部位から刺入した。
 大腰筋の確認は通電時に大腿骨小転子付近に刺激感があり、股関節の屈曲感が得られる事とした。また大腰筋の筋収縮の確認を超音波診断装置エコーによりおこなった。
 測定は座位で股関節屈曲の筋出力をブレイクテストで治療前・後に左右各3回行い、比較には最大値を用いた。 治療前に膝関節伸展時の筋出力も測定し、股関節屈曲の筋出力の左右差が大腿四頭筋によらないことを確認した。測定値の差の検定にはWilcoxon符号順位和検定を用いた。
【結果】
・日整会腰痛治療成績判定基準は25〜27点(平均26点)であった。
・長座位前屈での指趾間距離の平均値は治療前-2.8cmから治療後-0.8cmと変化した。
・後屈時痛の平均値は治療前3.2cmから治療後1.4cmと変化した。
・腸腰筋のストレッチ痛の平均値は治療前2.2cmから治療後0.9cmと変化した。
・大腿四頭筋の筋出力では患側は215N~343N、健側は211N~343Nで、左右差は0~10%の間であり、腸腰筋と比較し大きな差は認めらなかった。
・腸腰筋の筋出力は健側では
  治療前266N~352N(平均313,4N)、治療後294N~426N(平均336.4N)。
  患側では治療246N~314N(平均271N)、治療後292N~422N(平均324.6N)となり治療前後で患側に有意差(P<0.05)が認められた。
【結語】
 低周波鍼通電療法は、目的とした筋や神経に直接刺激が出来る。これは通電中の筋の動きにより確認が出来る。今回、大腰筋に対し低周波鍼通電療法を行い、治療前後での筋出力の差を患側,健側について測定した。その結果、患側において治療前後で有意な差が認められた。この事より、低周波鍼通電療法は筋出力の低下した筋に対し、筋出力を改善する有効な治療法の一つであると考えられた。

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治療スタッフはすべて筑波大学、東京大学、早稲田大学で研修を受けたものです。治療技術には水準以上のものがあると自負しています。メールでのお問い合わせのお答えには数日かかる場合がございます。お急ぎの場合は電話をお願いいたします。